脳が分厚くなるのは、脳細胞の小さな枝がものすごい勢いで増えるからだ。
神経科学者はこれを過剰生産とか、横溢と呼んでいる。
異論はあるものの、一般に横溢が起きているときの脳は、新しい情報をどんどん取りこむことができるし、新しい技能も身につけやすい。
生命の存続にかかわるものならなおさらだ。
神経科学の世界では、横溢は脳が発達する早い段階に見られるというのが長年の常識だった。
しかしGは、10代に入っても脳に横溢が起こっていることを発見した。
「ほかに情報はほとんどなかった。
それに脳細胞の過剰生産は、10代よりずっと前に終わっているというのが通説だった。
だからひたすらデータを集めたよ。
さらに多くの脳をスキャンして、半年間データを追跡した結果、ようやく事実だと確信した」。
Gは150人近い被験者から脳のデータを集めたが、どれも結果は同じだった。
彼はこの所見を、権威のある学術誌《N》に発表した。
ティーンエイジャーの脳を数多く、長期にわたって観察した過去に例のない研究から、彼らの脳は研究者がそれまで思っていた以上に発育を続けていると報告したのである。
Gは、ティーンエイジャーの大脳皮質のなかでとくに変化が顕著な部分も突きとめた。
それは論理や空間的推論を受けもつ頭頂葉や、言語をつかさどる側頭葉だが、とりわけ目を引いたのが前頭葉だった。
脳の監視役とか、最高責任者と呼ばれている前頭葉は、おでこのすぐ裏側に位置しており、前もって計画を立てたり、衝動をこらえたりといった、要するにおとなにふさわしい行動を後押ししてくれるところだ。
前頭葉の成長は、身体的成熟を迎える(女の子で11歳、男の子で12歳ぐらい)ころにピークに達し、その後も変化を続ける。
前頭葉の灰白質は、成人レベルをはるかに上回るところまで体積が増えるが、その後は回れ右をして減っていくのである。
実際、同じ子どもの脳をくりかえしスキャンして観察すると、正しい行ないをするうえで不可欠な前頭葉は、発育を終えて安定するのがかなり遅いことがわかる。
完全に発達して精密に働きはじめるのは、20歳をかなり過ぎて「灰白質、つまり神経細胞の枝の生成には、第2の波があることがわかった。
それが最高潮に達するのは、生殖機能が成熟するころだ」とGは言う。
「その後、脳は刈りこまれていき、俳句みたいに真髄だけが残る。
まるで、そろそろ専門を作ろうよ、と脳が呼びかけているみたいだ」最初のうち、Gは灰白質の体積増加にだけ着目していた。
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